ーー シンデレラ.

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「あと……」 長期任務が明後日だと聞き、とりあえず大きな鞄へ荷物を詰める。 歯ブラシにコップ、お気に入りの枕。 それと愛用している銃の掃除セット。 もう既に鞄はパンパンの状態だ。 「ぬいぐるみ持って行けないなぁ……可愛いのに」 そう言って抱くのは猫のぬいぐるみ。 少し前に買ってからずっと一緒に寝ている。 それを入れるか迷っていると。 「入るぞ」 突然私の部屋に入って来たのは淳也。 「わぁぁ!?の、ノックしてよ!」 「テメェもしねぇだろ」 常識だって言ってたじゃん。 私を見つめる奴を睨み付けてやる。 だが逆に睨まれ。 「あん?喧嘩売るってか?」 口角がニヤリと笑う。 これはマズい。 何かイタズラを考えているに違い無いはず。 「いーえ。違います!で?何なのいきなり」 「あぁ。明後日の事でな」 そのまま部屋中央にある古いソファへ腰を降ろした。 私も向かいの木製の椅子へ腰掛ける。 「お前も行くんだろ?」 明後日の事だと言っていたので、おそらく長期任務の事だろう。 「うん、行くよ。淳也も選抜メンバーらしいじゃん行くの?」 「俺も行く。その事でなんだが……」 そこで淳也の視線がスッと私から逸れた。 視線の先は花瓶に入れた赤ずきんから貰った花。 さっきまでひしゃげていた花弁が今ではピンとしている。 「気を付けろ。お前が赤ずきんに何言われたか知らねぇけど、あいつは幸せの予知を教えた試しがねぇ。 知らせるのは不幸の予知の時だけだ」 「そう。で、何を気を付けるの?」 「長期任務中だ。危ねぇ事になったら誰かを絶対呼べ、良いな?」 何故こいつは上から目線なのか。 だから気に食わない。 けれど逆らう訳にもいかないので。 「了解。気を付ける」 それを聞くなり立ち上がって出口へ向かった。 思ったより早く帰るので密かに安心する。 するといきなり扉の前で此方に振り返った。 な、何だ? 身構えて何かを待つが、飛んできたのは罵声でもデコピンでもない。 「俺が守ってやるよ」 優しい言葉。 思わず聞き返そうとしたが、淳也は直ぐに部屋を出て行ってしまった。 .
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