ーー シンデレラ.

6/15

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
目が覚めたのは暖かい部屋の中だった。 辺りを見渡すと傍らには心配そうに私を見る淳也がいた。 「っ!?」 おもわず身を退いてしまった。 なんたってあの化け物の記憶があったから。 しかし淳也は悲しそうな顔をして。 「そうだよな、怖いよな…」 自虐的に笑いながらうつむいた。 どうやら今の淳也は化け物ではないらしい。 だからといって怖くない訳ではないけれど。 「結香、悪かった。怖かっただろ?さっき」 「う、うん……」 「今からすげぇ信じられない事言うけど、ちゃんと聞いてくれ」 「……」 淳也がそう言って取り出したのは先程の木箱。 一瞬身震いがした。 それを開くとひとつの鍵を取り出した。 「何の鍵……?」 奴は無言で立ち上がり後ろにあった本棚から、一冊だけ赤い表紙の本を引っ張り出してきた。 厚さはおよそ五センチくらいだろうか。 かなり古びている。 それに付いた鍵穴に箱から出した鍵を差し込む。 するとカチリと小さな音を立てて開いた。 「あっ」 驚いて声をあげると淳也がちらりとこちらを見た。 その目は真剣そのものだ。 「日本語は読めるよな」 「馬鹿にしないでよ」 淳也は僅かに口元を緩めると「いいか」と、私に確認をとって隣に座り込んだ。 手中にある本を覗くと左に文、右に挿絵が書かれていた。 「まず、俺が……お前に怖い思いをさせたな」 「うん……」 「それは俺の意思であって俺の意思でない」 「どういう事?」 「簡単に言えば何かに乗っ取られていた」 「は?」 あまりに現実離れし過ぎている。 乗っ取られる?意識を?体を? ありえない。 .
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加