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全くと言っていいほど気にしていなかった。
暖炉のほかには本棚がずらりと並んでいるだけだ。
炎の明かりだけで薄暗い。
「ねぇ、電気つけない?」
「んなもんねぇよ」
「え?」
天井を見上げるとたしかに電灯が見当たらなかった。
「ここどこなの?」
「わからない」
「だって淳也本の鍵とか電気がないとか知ってたじゃん、ここがどこなのかも知ってるんでしょ?だいたい私が意識を失った時いたのは淳也なんだから、ここに連れてきたのも淳也なんでしょ?」
「鍵や電気はお前がまだ眠ってる時にこの部屋を捜索したから知ってた。それと、お前をここに連れてきたのは俺じゃない」
「じゃあ誰だって言うの!」
「だからわかんねぇって」
ここにきて初めて恐怖を覚えた。
私たちはどこかもわからないところにいるんだ。
はやくここから出なきゃ。
そう思うや否や立ち上がって扉へ向かった。
「おい、どこ行くんだよ」
「とりあえずここから出るの」
「はぁ……」
「何?」
「どこだかわかんねぇ所にいるんだぞ?もし俺たちが誘拐されてたとしたらどうだ、扉を出たら凶器を持った奴がいるかも知れないだろ」
「それでもじっとしてるよりはいいもん!怖いなら淳也はここにいればいいよ」
ドアノブを回すと後ろから手を掴まれた。
言うまでもなく掴んだのは奴だ。
「何?離してよ」
「どけ、俺が先に出て様子を見る」
ぐいっと手を引かれた力は思いのほか強くて少し驚いた。
淳也の後ろにまわると小さいながらも男らしい背中だった。
「開けるぞ」
扉が開かれると外の光が徐々に入り込んでくる。
完全に開け放たれた扉の向こうには誰もおらず、白い廊下が続いていた。
どうやらここは角部屋らしくこれ以上奥には部屋はなかった。
廊下の天井にはシャンデリアが点々とついている。
「お屋敷……?」
「かもな」
ゆっくりと歩みを進めると前方の角から二人組の男女がやってきた。
「やばっ!どうしよう!」
「慌てるな、大丈夫だから」
「その自信はどっからくるの!」
ギャーギャー騒いでいたらその人たちがこちらに気付いたようだ。
一直線の廊下だし、当たり前か。
男がつかつかと大股で近寄ってくる。
女の方はというと微笑みを称えたままゆっくりと歩いてくる。
目の前まで男が来ると不審者でも見るような目で睨まれた。
眼鏡越しの切れ長な目が冷たくこちらを見ている。
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