ーー シンデレラ.

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だがそれきりで一言も発しない。 それに遅れて女の方がやって来る。 「まぁまぁ、可愛らしいお二方。どうされましたの?」 「あ、えっと……」 「お聞きしたいんですけど、ここはどこですか」 どもっている私を背中に庇い淳也が一歩出た。 女は一瞬驚いた顔をしてからまたすぐに笑顔に戻った。 男はというとまだ睨み付けたままだが。 「ここはキーパーハウスですわ。私たちはブックキーパー、以後お見知りおきを」 「はあ」 「さて、フェンリル。お客様ですわよ、広間へお通ししてちょうだい」 「……了解した」 ーーーーー フェンリルと呼ばれる男と、笑顔を絶さぬ女に連れてこられたのはきらびやかな広間。 立派な絨毯とシャンデリアがあり、中央には艶のあるテーブルとイスが設えてあった。 「どうぞ、お座りになって」 女は先に腰掛けると手でイスを示して座るよう促した。 淳也が座るようなので私も座ろうとすると、フェンリルがイスを引いてくれた。 「あ、ありがとうございます……」 「客人は礼など言わなくていい」 「えっ、はい」 無表情なままフェンリルは女のもとへと戻っていってしまった。 何か女が指示を出すと彼は部屋から出て行った。 「さてと、ではお話をいたしましょうか」 「あの、とりあえず教えてもらいたい事が」 「何でもお答えいたしますわ。でもその前にお二人のお名前を教えていただけますこと?」 「俺は相澤 淳也、こっちは田中 結香です」 「淳也さんに結香さんですか、良いお名前ですわね。私はファラ、先程の彼はフェンリルですわ」 「えっと、じゃあファラさん。質問なんですけど、ブックハウスとかブックキーパーって何ですか」 「あっ、あと、私からも。ここはどこなんですか?あの、ブックなんとかじゃなくてどなたのお宅ですか」 ファラはいっそう笑みを深くし胸に手を当てた。 それから小首を傾げ。 「それではまず、結香さんのご質問からお答えいたしますわ。ここは誰のお家でもなく、ブックハウスですわ」 「どういう……」 「お次に淳也さんのご質問にお答えいたしますわね」 広間の扉が開かれて先程出て行ったフェンリルが入ってきた。 その手にはティーカップとケーキの乗ったカートを押している。 .
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