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「何、これ」
「驚くのも無理ありませんわ、初めて見ましたでしょう?」
「お前ら何なんだよ」
淳也がイスから立ち上がって私の手を取り、二人と距離をとる。
私も淳也の後ろに隠れた。
だっておかしい。
いきなりあんな物が現れるなんて。
それにここが何なんだかわからないし、怪しすぎる。
「そんなに怖がらないでくださいませ……危害を加えるつもりはありませんわ」
「これはゲートだ。お前たちには見たことのない物だろうが、危険な物ではない。安心しろ」
「信じられるとでも?」
フッっと今まで無表情だったフェンリルが笑う。
「信じられないのなら、自分の目で確かめればいい」
ゲートの前から身を退いて顎をしゃくった。
くぐれということか。
「淳也、行くの?」
「お前は待ってろ。何かあったらすぐ逃げるんだぞ」
「なにそれ、やだ。私も行く。一人で待ってられないもん」
「ガキか」
悪態をつきながらも私の手を引いてくれた。
ゲートの表面は鏡のようになっている。
試しに指で触れてみると水のように波紋が広がった。
「ひゃっ!水だよ、これ!?」
「遊ぶな。通るのか、通らないのか。どっちなんだ」
表面をぴちゃぴちゃしていると呆れ顔でフェンリルに首根っこを掴まれた。
後ろには苦笑いのファラも。
味方のはずの淳也ですらため息をついている。
はいはい、通りますよ。
「行くぞ」
「う、うん」
意を決してゲートへ足を踏み入れる。
するとすぐに地に足が着いた感触があった。
恐る恐る目を開けるとそこは赤。
森の緑に一面の赤だった。
遠く前方には白と青を貴重とした城がそびえ立っている。
さっきの紅茶の甘い香りとは全く違う錆びた匂いが鼻をつく。
「これって……」
「血、だな。一面血だ……」
さすがの淳也も顔をしかめる。
視界を右に移すと何かが目に入った。
「うっ……!?」
見なければよかった。
目に入ったのは赤い塊。
甲冑を着た人間だった。
腹を切られたのだろう、生々しい肉が剥き出しになっている。
それに折り重なるように足を切られた、同じく甲冑を着た人間が倒れていた。
目を背けるべく逆方向を見たがそちらも変わらなかった。
倒れた人間と肉片が視界に入る。
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