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朝露がまだ芝に残っている草原を、当てずっぽうに突っ切る。
皮のブーツに露がつき、僅かに滑り易くなった。
「結香先輩、噂には聞いてましたけど。本当にその格好で戦うんですね」
「え?うん。何で?」
隣りを歩くカナタが珍しく興味深気に聞くので驚いた。
カナタは何かと興味無さ気で、適当な所がある。
だから何かに食いつくなんてそう無い。
「だって普通は軍服か鎧じゃ無いですか」
「私の軍服じゃん」
「上はそうですけど、缶バッジ付けてますし。下スカートですし、膝当てもしないでブーツだけですし」
「はあ」
かく言うカナタだって軍服の上着に短パンで、ボーイスカウトに見えなくも無い軽装だ。
とてもこれから戦う者には見えない。
だが三つだけ二人を軍人に見せている物がある。
ブックキーパーの証である、白地に金糸で雲を施した腕章。
胸に付けた腕章と同じ柄のバッジ。
腰に重々しく巻いた銃や弾。
それが無ければただキャンプに来た姉弟だ。
「カナタも銃使うんだ」
「はい。結香先輩の銃さばきに憧れて……」
「へぇ。そんな憧れられるような戦い方じゃ無いけどね」
「いえっ!カッコいいです!」
ブンブンと腕を回して凄さをアピール。
本当、ジェスチャーがでかい。
「そっか。どうでも良いんだけどさ、もう直ぐ基地?」
「え?あ、はい。もう少しですよ」
私達は”赤ずきんちゃん”の絵本にいる。
例の狼制圧の為だ。
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