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女子供だけの家ではありましたが、近くに住む山上与吉と言う男が、我が家に出入りしていました。
山上は当時五十半ばの男でしたが、その昔私の祖父が自分の土地を分け与えて、この土地に住まわせた人間だと聞いております。
山上は祖父に拾われた恩を深く感じているらしく、昔から我が家に出入りして畑で作った野菜を運んできたり、家の雑用を一手に引き受けており、我が家には無くてはならぬ存在でした。
「奥さん、おはようさんです。
今朝畑で採れた茄子を持って参りました。
今日はこれでお浸けでもお作りしましょうか」
そう言って、毎朝必ず家にやってきます。
家の敷地内にあった鶏小屋に卵を取りに行ってくれ、台所の籠に入れておくのも忘れずにやってくれました。
「与吉さん、いつもありがとう。
今日は東京から疎開してくる子供達がやってくる日です。
申し訳ないけれど、駅まで迎えに行って貰えますか」
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