序章

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弁護人としてこの事件を担当することになった鑓水研吾は、事件調書を読み終わると、その情報量の少なさに裁判の難しさを予感していた。 ことに、被告人である桜木良江の自供部分には不明瞭な印象を拭えない。 そこには、犯行に至った大事な犯行理由がはっきりと読み取れないのだ。 こう言った場合、被告人からどれだけ事件以外の話を聞き出すかも重要になる。 検察側はありがちな犯行理由を作り上げるしかないだろう。 それに対抗するには、被告人の生い立ちを含めて、被告人の心の中を掘り出していくしかないのだ。 鑓水は、母親ほどの年齢の被告人と接見するために拘置所の門を潜った。
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