赤い雪

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「叔父には子供がいなかった。 けれど、叔父はそのことを嘆いてはいなかったの。 むしろ忌まわしい血を残す必要はないとまで言っていたわ。 先だっての戦争では、この姫無村でもたくさんの者が戦地から戻らなかった。 もともと過疎化の進んでいた村は働き手を失いつつあるの。 叔父はこれを機に、姫無村と来家家に巣食っている呪いと共に、この村を放棄した方がいいと言い出していた。 我が家から鬼が生まれてしまうのが、本当に言い伝えられているように先祖の時代からの呪いであるのなら、ここに来家家とそれを護る姫無村がある限り、呪いの連鎖は切れないのだから。 それを聞いた私は、村の因習に従う振りをして叔父と婚姻を結び、辰彦を先に外へ出してしまおうと考えたの。 私はその提案を叔父にしたのだけれど、当初叔父は私の人生を賭けた提案には反対だった。
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