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看護婦が声を掛けながら、正子さんの額の汗を拭いています。
脇に立つ辰彦の蒼ざめた顔色から、私は辰彦が私達の話を聞いていたのだと確信しました。
病室を出て私と二人になると、辰彦は言葉少なにそれを認めていました。
「姉と叔父が、僕の為に犠牲になろうと考えていたことを聞いて、少なからずショックを受けているよ…… 」
「辰彦さん、正子さんは辰彦さんの為だけではなく、姫無村の人達皆のことを考えていたのだと思います。
どうか、自分の所為などと考えるのはやめにして。
正子さんと、亡くなった叔父様の本意を考えてあげてください」
「分かっています…… 」
辰彦は姫無村のある山を見ながら、病院帰りの道で何かを決心したようでした。
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