赤い雪

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正子さんが亡くなって一年と少し…… 学校を卒業した辰彦は、教員となって私の住む町に帰ってくることが決まりました。 しかし、辰彦の卒業を待っていたかのように、今度は心臓の弱かった辰彦の母が発作を起こして亡くなってしまったのです。 母親の死をきっかけに、辰彦は姫無村との訣別を決心したと、村人達に告げました。 もちろん、辰彦は正子さんの話を聞いた時から決心していたはずです。 けれど、母親のことが気掛かりだったのでしょう。 自分の母親の葬儀の日、辰彦は少なくなった村人の前で自分の気持ちを語りました。 そして、村人達は辰彦が来家の家には戻らないことを知ったのです。 その日は姫無村が怒りをぶつけているかのように、激しい嵐になりました。 ゴーゴーと唸り声のような暴風が村に襲いかかります。 春の嵐が、これほど迄に激しかったのは後にも先にもありません。 村人達の中には、辰彦を掟破りだと責める者がいました。 一族を滅ぼすつもりなのか、と。 嵐も後押しするように辰彦をなぶります。 しかし、姫無村がどんなに騒ごうとも、辰彦の決心は揺らぐことはなかったのです。
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