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そして、立派に良江お嬢さんは成人を迎えられ、婿取りまで決まりました。
与吉は心底ほっとしております。
これで桜木家も安泰です。
これを機に……
あっしはお暇を頂いて、信男と一緒に東京へ戻ろうと思います」
「ええー! 」
山上の言葉は私を驚かせました。
山上は私が産まれた時には、もうこの家の仕事をしていました。
毎朝鶏小屋から産みたての卵を届けてくれ、庭木の手入れを怠らず、田畠も任せられていた山上は家族同然の存在でした。
山上が居なくなることを理解するのは難しいことでしたが、その理由は考えられます。
私は、自分の結婚が山上を追い出す結果になったのではないかと考えたのです。
「与吉っつぁん、辰彦さんのことが気に入らないからなのね?
そうなんでしょう?
与吉っつぁんが辰彦さんとはやっていけないと思うのなら、私達は別の場所に住んだって構わない。
この家には与吉っつぁんが必要なんだもの」
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