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せめて半年後に決まった祝言だけでも出てからにして欲しいと懇願しましたが、東京の家を借りてしまったので、一週間後には移ることに決まったのだそうです。
その代わり、祝言には顔を出すと約束して山上と信男は頭をぺこりと下げて帰って行きました。
私は二人の後姿を淋しい気持ちで見つめていました。
「ねぇ、母さん。
嬉しいことって哀しいこととセットで訪れるものなの? 」
「そんなことはないわよ、良江さん。
与吉さんの決心を哀しいことと捉えないであげましょうね。
もちろん、良江さんだけではなく母さんだって淋しいわ。
でもね、与吉さんと信男さんの為には……これで良かったのよ。
与吉さんは東京を捨てて来たって言っていたけれど、本当はそんなことなかったのね。
生まれ故郷の東京に戻りたいって気持ち、とても良く分かるわ…… 」
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