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母の言葉に、急に不安な気持ちが渦巻きました。
「母さん……
もしかしたら、母さんも東京に戻りたいの?
前に与吉っつぁんが、母さんの中には今でも東京もんの血が流れてるって言ってた。
東京もんの血は、母さんにこの土地の人間になることを赦していないと。
ねぇ、母さん。
母さんもいつか良江を置いて東京に戻ってしまうの? 」
東京を捨てたと言っていた山上ですら、何十年住んだ土地より生まれた地を選んだのです。
この土地の者になりきれない母の本音はどうなのだろうかと、心配でした。
「良江さんたら……
幾つになっても、子供の頃と変わらないのね」
母は、優しい笑みを浮かべました。
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