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母は生まれてから青春時代までを過ごした東京を、とても愛していたのだと思います。
けれど、それと同じように嫁いで来た桜木の家も愛しているようでした。
それを知って少しほっとしたのと同時に、いつか母と共に、母の青春の思い出が詰まった東京を歩くのが楽しみになっていました。
「母さん、良江も母さんと一緒に東京を旅したい。
落ち着いたら、是非行きましょう。
与吉っつぁんやノブちゃんにも会えるだろうし」
「そうね。
母さんも楽しみだわ。
母さんが若い頃に、アキちゃんと行ったパーラーが残っているといいのだけれど」
母は、まるで少女のように頬を上気させて微笑んでいました。
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