運命

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本来なら来家家の当主となる辰彦でしたが、桜木の家に入ることとなった祝言には、姫無村の人達は誰一人来ませんでした。 せめてトメさん達だけでも、と思ったのですが、トメさん達も姫無村の怒りを考えると、裏切り行為のような私達の結婚を祝うことは憚られたのでしょう。 私達の結婚は、姫無村にとっては許されない結婚だったのです。 辰彦側の列席は、辰彦が勤める学校の関係者ばかりでした。 唯一来家家から辰彦と共に桜木家に来たのは、一本の沙羅の木だけです。 来家家の庭木から一本だけ、儀式のように桜木の庭に植樹されました。 その一本の沙羅の木は、その後辰彦が挿木をして増やしていき、やがては庭の入口に並んで花を咲かせるようになるのです。 私達の結婚……来家家と桜木家の繋がりは、このような形で始まったのです。
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