悪夢

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私は一緒に手伝うとは言えず、結局辰彦一人で見てくることになりました。 「思えば僕も薄情な甥だ。 叔父の遺品の整理もせずに、朽ちるままに放置していたのだからね。 供養のためにも、叔父の写真でも見つけてくるよ」 休日の日曜日、辰彦は笑顔でそう言うと姫無村に向かいました。 私は午前中に家の仕事を一通り終えて、簡単にお昼を済ませると、辰彦が庭木として増やした沙羅の木を眺めていました。 沙羅の木は、姫無村来家家の美しい庭に植えられていた木です。 姫無村と来家家を捨てた辰彦も、どこかで実家を懐かしむ気持ちがあったのでしょう。 実家の庭木と同じ木を植えることによって、時に子供の頃のことでも思い出していたのかもしれません。 そんなことを考えながら、満開の頃を迎えた白い花々を眺めていると…… ぽとり…… ちょうど、沙羅の木が花首を落としたのが目に止まりました。
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