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『貴方は決して狂ったりしない』・・・・・・辰彦にそう言いたかったのですが、私は何も言うことが出来ずにいました。
そして小刻みに震える自分の身体を止められずに、ただ自身の両腕を抱きかかえていたのです。
「良江、君には申し訳なかったと思っている。
そして、この桜木家にも……申し訳ない。
僕は教職も続けていく自信がないんだ」
辰彦はそう言うと、ふらりと立ち上がって書斎にしている自分の部屋へと消えて行きました。
『暫くは辰彦をそっとしておいてあげよう…… 』
私は何もできずにいました。
そっとしておくべだと自分に言い聞かせていました。
それは何もできないことへの自分への言い訳に過ぎなかったのです。
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