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綾子さんは笑顔で部屋を出て行きました。
私は不安な気持ちを抱えたまま、箪笥の引出から辰彦のノートを出してきました。
膝に辰彦の言葉が詰まったノートを乗せ、手で静かに撫ぜていると辰彦の声が聞こえてくるような気がするのです。
『来家の血を繋げては駄目だ。
呪われた血は、早く断ち切ってくれ』
辰彦がそう言っているようでした。
『妊娠初期は特に気をつけるように言われました』
綾子さんが口にしていた言葉を思い出しました。
もし、綾子さんが妊娠初期に転んでしまったら・・・・・・?
私はその時、とても恐ろしいことを頭に過ぎらせてしまっていたのです。
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