そいつはやって来た。

3/8
前へ
/8ページ
次へ
そんなことをやってるうちに日が沈みだしたので、御堂の端に停めてある近所のお婆様の御下がりの、おばちゃんスクーターにまたがる。 勿論、歪んだ思考のヨーコはそのスクーターをベスパと言い張った。ユニオンジャックとストーンズのベロのステッカーを貼って最大限のおしゃれをしてるが、車体に片仮名でベスパと書かれた事で何もかもを台無しにしている。 まあ所詮おばあちゃんスクーターだし。 現場用のヘルメットに(道交法違反)、防塵メガネというシュールな出で立ちになり、ナップザックに突っ込んだ、ネックむき出しのギターを担いで家に戻ろうとした。 振り向くと、御堂に座るブチがこっちを見ていた。 「ブチじゃあな、」 そう言ったら、御堂の向こうに人影が見えた。綺麗な女性だ。何故かフェンダーのプレべを担いでいる。 あれ、でも向こうって海じゃん。 あわててセルをかけ、バイクを進めた。 「なんじゃありゃあああああああ」 まるでオフロードコースのような道を、おんぼろスクーター(婆ちゃんごめんね)でかけ抜けていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加