雨男と出会い

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1 『もう逃げんなよ、お前が俺から離れられるはずないだろ?つーか…逃がさねぇから』 『先輩…』 『誰にも渡さねぇ、俺だけをずっと見てろ』 「はい、OKです~頂きました。お疲れ様で~す」 いつも思う、こんなオレ様な台詞を本当に言う男が居るのだろうか。 俺には到底言えないな…というか、ここまで独占欲を剥き出しにするほど好きになった事がない。 「お疲れ」 「お疲れ~これから飯行かねぇ?」 「悪い、先約。じゃーな」 共演者、スタッフ達への挨拶もそこそこに、俺はスタジオを出た。 姫宮祥輔、職業「声優」これが俺。 声優になるのは別に夢だったわけじゃなくて、就職するのが嫌で、大学受験も面倒だった。 それで、何となく専門学校に入ったのがキッカケ。 それからも流されるままに、養成所に入り、幸運にも事務所に入ることができた。 気が付けば、マイクの前に立つのが当たり前になっていた。 俺のデビュー作、主人公の恋敵の役が視聴者に受けたらしく、俺の意識とは反比例して名前ばかりが広まっていった。 声優界の良い所は、堂々と街を歩けるところだと思う。
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