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『もう逃げんなよ、お前が俺から離れられるはずないだろ?つーか…逃がさねぇから』
『先輩…』
『誰にも渡さねぇ、俺だけをずっと見てろ』
「はい、OKです~頂きました。お疲れ様で~す」
いつも思う、こんなオレ様な台詞を本当に言う男が居るのだろうか。
俺には到底言えないな…というか、ここまで独占欲を剥き出しにするほど好きになった事がない。
「お疲れ」
「お疲れ~これから飯行かねぇ?」
「悪い、先約。じゃーな」
共演者、スタッフ達への挨拶もそこそこに、俺はスタジオを出た。
姫宮祥輔、職業「声優」これが俺。
声優になるのは別に夢だったわけじゃなくて、就職するのが嫌で、大学受験も面倒だった。
それで、何となく専門学校に入ったのがキッカケ。
それからも流されるままに、養成所に入り、幸運にも事務所に入ることができた。
気が付けば、マイクの前に立つのが当たり前になっていた。
俺のデビュー作、主人公の恋敵の役が視聴者に受けたらしく、俺の意識とは反比例して名前ばかりが広まっていった。
声優界の良い所は、堂々と街を歩けるところだと思う。
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