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だから、最近顔出しの仕事が増えてきたのは少々痛い。
「イケメン声優」なんて売り出されるのも正直嫌だ…ただ顔で売れていると思われたくない。
今のところイベントなど、最低限に留めている。コアなファンやアニメ好き以外は、俺の事なんて気にもしないだろう。
本日も堂々と電車を乗り継ぎ、渋谷へと向かう。
平日なのに、やはりここは人が多い。地方出身の俺ははこの人混みに慣れるのに1年近くかかった。
時計を見れば、待ち合わせの時間をとうに過ぎている。
これはまたご立腹だな…。
「悪い、遅くなった」
「良いよ。いつもの事だもん」
謝る俺の顔を見ることもせず、彼女は携帯をいじっていた。
1ヶ月前から付き合いだした彼女は、先輩に誘われて行った合コンで知り合った。
彼女は声優という仕事に興味があったみたいで、積極的に話してくれたが、化粧が濃いめでプライドが高そうな彼女は俺のタイプではなかった。
しかし、お開きになる寸前に強引にも周りからくっ付けられ、付き合うことになってしまった。
「行こう、腹減ったろ?」
「うん…」
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