3人が本棚に入れています
本棚に追加
むくれている彼女の手を一先ず握り、人混みを歩いていく。
ご機嫌を直してもらうためにも、今日は彼女が好きなイタリアンでも行くか…。
やれやれと思いながらも、俺は行きつけのイタリア料理の店へと足を向けた。
いつも通りの会話、いつも通りの空気、いつも通りの距離感…でも、違和感は確実にその顔を見せていた。
彼女をマンションまで送ると、何故か彼女は足を止めた。
「どうした?」
「あの…話が、あるの」
不思議と俺は驚かなかった。この後、彼女が何を言うかも想像がついていた。
きたか…俺の頭は至極冷静にそう思っていた。
「別れよ…嫌いになったわけじゃないけど、本当にごめんなさい」
震えている声は、涙を我慢しているからなんだろうか。
嫌いじゃない…それはズルい綺麗事だ。
詰め寄ることも出来ないじゃないか、まぁそんなことはしないけどね。
「分かった…分かったよ。じゃ、元気でな」
最後に、俯く彼女の頭を優しくポンポンとして俺は踵を返した。
いつも長く続かない、俺なりに好きなはずなのに…心の何処かで恋愛をしている自分を冷静に見てしまっている自分がいる。
「女ってめんどくさい」
最初のコメントを投稿しよう!