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忙しい合間をぬってはメールしたり、電話したり、デートの時間を作ったり。俺なりに相手の事を考えていた。
でも、いつも「祥輔は本当に私を好きじゃない」そう言われてしまう。
相手も同じように、俺の事を思ってくれてたのか?
「声優」という職業に惚れただけじゃないのか?
寂しさが顔を覗かせるどころか、全ての鎖から解き放たれたような気分だった。
前の生活に戻っただけ、これからは自分のために時間が使える。
帰ったら何をしよう…そう考えていたとき、いきなり大きな雨粒が降ってきた。
「ついてねぇな」
俺は雨男だ。小学生の頃も楽しみだった遠足や修学旅行も大抵が大雨になる。
本気で毎日傘を持ち歩こうかな…。
夏ならまだしも、まだ4月のこの季節に濡れるのは堪らない。
俺は空き地にある、大きな木の下へ駆け込んだ。
通り雨だろう、と空を睨んでいると「ミィ~」と子猫が鳴く声が聞こえた。
目線を下げれば、そこには先客がいた。
寒そうに震える子猫のすぐそばに、木にもたれて眠る女の子。
…何でこんなところで寝てんの?生きてるよね?
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