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『何考え込んでんだよ、雲英。』
後ろから聞こえる彼の声。
なんだか、懐かしい感じがする。
そっか、ここは聖林だもんね。
彼が。
貴方がいる、聖林だもんね。
ああそうか……ここは、夢の中か。
いまさら、そんなことに気づく。
数ヶ月ぶりの、彼の顔を見る。
『?なんだよ。』
あの頃と変わらない笑顔で、貴方は言った。
「─……久しぶり」
『何言ってんの、昨日も会っただろ。』
昨日──…
ここは、夢の中だもんね。
「…うん。」
『あ、そうだ、廊下行こ、廊下。』
廊下?
『お前の後輩が探してた。なんか、今日の部活のことらしいけど。』
後輩…部活……
彼に手をとられ、廊下を歩く。
…もし聖林高校へ通っていたら…秀明高校へ来なかったら、こんな未来があったんだろうか。
「ごめん……」
『え?』
君から離れたりして。
「ごめんね……」
離れてごめん。
弱くて、ごめん。
「雲英!」
突然の大声に驚き、パチッと目をひらく。
目の前にいるのは原田さん。
キラ「あ…夢……」
そうだ。あれは夢なんだった。
原田「大丈夫か?なんかうなされてたから……」
キラ「はい……」
ケータイを開くと、時間は午後4時47分。
アラームが鳴る3分前だ。
私は起き上がって、夕餉の支度へ向かった。
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