月にむかって吼えるのさ

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ブツブツ言ってると、彼女のくすりと笑う声がすぐ横から聞こえて、俺は素早くそのピンク色の唇に口付けた。 「き、急になにするのよ」 やっと見れた可愛い反応に気分がよくなる。 ほんのり赤く色付いた頬を見ている俺は、少し人の悪い笑みを浮かべているかもしれない。 「ホントにわからない? 今夜は満月…、変身する夜だよ」 そしてこの部屋には俺たち二人きり。 立ち上がってカーテンをひくと、大きくて丸い月から淡い光がそそがれる。 「知ってる? 月には不思議なチカラがあるって」 振り返ると、彼女が怪訝な顔でこちらを見ていた。 ちょっと寄せられた眉間のシワさえ可愛い。 「降りそそぐ光が肉体を…、心を変えていくんだ。そして月に魅せられた俺は、一匹のケモノへと…」 にっと笑うと、彼女の小さな唇から、深々と大きな溜め息が零れた。 「月ならとっくに出てるじゃない。ここに来るときも出てたでしょ?」 なんだよ。ノリが悪いな(笑)
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