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「……おぉ、さすがだな」
目の前の建物を見て、少年は感嘆の声を漏らした。
ここはノンシュタイン王国国立エドラス魔法学園高等部。この世界に存在する中では最大規模の魔法教育機関である。
それは学舎というより、城塞だった。遠目に見ても分かる堅牢な石造り。所々にある塔。壁に開いた穴は、そこから弓や銃で攻撃することで、反撃を受けないようにしていたのだろう。所々に、実践的な防衛設備の面影を残している。
(古城を改修して校舎にしたって話、本当だったんだな……)
そんなことを思いながら正門に入り、少年は中庭を歩きだした。空は清々しいほどの快晴で、日射しは柔らかい。桜吹雪は、自分を祝福してくれているかのようた。
中肉中背の体格に、サラサラとした短めの黒い髪に同色の瞳。生まれながらに目も髪も様々な色があるこの世界では、両方とも黒というのは目立つというほどでもないが、少々珍しい。
制服は黒を基調としたブレザーで、青いネクタイは今年の一年生の証だ。今日はこの魔法学園の入学式。彼もまた新入生の一人である。
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