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どうやら追ってきているようだ。後ろからメキメキと木々が押し倒される音が聞こえてくる。熊か何かの類だろうか?
「俺はアンタのランチなんかになるつもりなんて無いんだよ!」
足元に落ちていた石を拾い、振り向きざまに投げつける。この石も、ただの学生から投げられたとはとても思えない速度でほとんど水平に飛んで行った。
しかし、そんな事に関心している場合ではない。
石を投げる為に振り向いたとき、初めてその姿を見た。
――熊なんて可愛いものじゃない。いや、姿形そのものは熊で間違いないんだが。
俺を追っている“それ”は、俺の三倍はあろうかという巨躯と、俺の腕ほどもある爪、しかもその先端は鶴嘴ほどに鋭利だ。
今のところは十メートルほどの差をキープしているものの、スタミナの問題でいずれ追いつかれるだろう。それまでに何とか打開策を考え出さなくてはならない。
だが――。
(打開策なんも無ぇ――――!!)
逃げる。
ひたすら逃げる。
しかし、少しずつ、少しずつドデカ熊との距離は縮んでいく。
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