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「…ッッはーっ、はーっ。もう大丈夫、ですねっ」
「なんで逃げる必要あんだよ。みんなブッ倒しただろ」
息切れして滝のような大汗かいてる僕とは対照的に、彼は呼吸ひとつ乱れてない。
無我夢中で彼の手を取り走り続け、気付けば祭りの喧騒の輪の中にいた。
小さな神社で行われる、小さな秋祭り。
建ち並ぶ屋台、誰もが笑顔で行き交う中、二人は立ち尽くす。
「怪我、ないですか?」
「当たり前だ。…礼なんか言わねぇぞ。あんな虫ケラ、俺一人で充分だった」
――嘘だ。
彼がハンパじゃなく強いのは判ったけど、
足枷をくらったように動けなくなってたじゃないか。
「おお、おまわりさーんッッ!こっちですー!」
気付けば震える足で僕はそう叫んでいた。
恐怖から声が裏返ってしまって、あっという間にカマ掛けだとバレてしまったのだが。
僕の声に気を取られた一瞬の隙を見逃がさず、
華奢で非力だと思ってた彼から信じられない鋭い拳が飛び出した。
そこからはもう、あっという間で。
お粗末なヒーローアニメのショッカーさながら、彼の足元にうずくまり倒れる連中。
「こんな弱ぇヤツらだったなんてな…」
動くコトもできず呻く連中を、冷酷なまでの瞳で見下し呟く哀しげな声が、胸に刺さった。
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