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強がってる態度とは裏腹に、
言ってるコトと思ってるコトがこんなに違う人を、僕は初めて見た。
彼の素直な部分が僕には垣間見見えてしまって、
そしたらもっと知りたいって思って。
「に、逃げましょうっ!」
「はぁッッ?」
気付いたら彼の手を取って走り出していたんだ――。
このまま別れるのが惜しくて、荒い息を押し殺して彼を見る。
間違いなく今手を離したら、彼は躊躇うコトなく去ってしまうだろう。
僕はそんなの、イヤだ。
「あのっ。…せっかくだし、祭り見て行きませんか?!」
「行く訳な…」
「行きましょう!まだ時間、大丈夫だし」
怪訝な表情の彼の返事は聞かず、半ば無理矢理に手を引く。
繋がった掌がひどくドキドキするのは、
きっとさっきの全力疾走のせいだ。
周囲が笑顔で満ち溢れる中、彼だけはひどく居心地の悪そうな顔をしていた。
自分で作り染め上げた悲しい色が、僕には見えた気がした。
損得の感情で曇ってしまって、初めから全てを諦めてしまってる。
仮面のように張り付いてる表情を、どうにかして変えたいって思ったんだ。
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