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「それでは皆
桐条君にお別れをしましょう」
「はい」
先生の言葉に皆が
何の感情も持たずに
返事をする
もう、二度と会えないと
哀しむ者も居なければ
居なくなって清々する、などと
気が晴れる様な
顔をした者も居ない
夏休みに呼び出され
イライラしている者こそいたが
声に出して怒鳴る者はいない
そう、この俺
桐条 創は誰とも
関わりを持とうとはしなかった
理由や意味はあるが
此処の生徒と関わりを
持ちたく無かったから
関わらなかった
これが一番簡単な返答だ
教卓に立っている
このクラスの担任が
手招きをして
創を教卓へ誘う
ダルそうな顔をしながら
創は机から立ち上がり
教卓へ向かう
「短い間でしたが
皆さんと会えて楽しかったです
夏休みに集まって頂き
ありがとうございます」
心にも無い言葉を
綺麗事で飾り最後に
微笑みを振り撒く
すると、ちょこちょこと
手を叩く音が教室に鳴り響き
創は自分の席に戻った
その後適当に挨拶を済ませ
蒸し暑い都会の街並みを
縫うようにして歩き
もはや家具すら残っていない
家の中へと入っていく
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