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「…やめてくれよ…母さんまで、家出とか…。」
「あの人が、悪いのよ!」
夕方、仕事が終わって帰ってくると、玄関先で待っている母さんがいた。
手に、小さな旅行鞄…嫌な予感がしたんだ…。
案の定だ…新のことで、親父と喧嘩したらしい…。
とりあえず、寒いし、家に入ってもらう。
暖房をつけて、部屋を暖める。
「…悪い…まだ、智世、帰ってなくて…。」
「気にしなくていいわよ。…迷惑だって、わかってるから。」
「迷惑だなんて言ってないだろう…。
はい…お茶でも飲んで。」
「あら!…美味しいわね、このお茶!」
テーブルを挟んで、反対側の席に座って、母さんに、話し掛けた。
「…なあ…親父と、どんな話をしたんだよ?」
「どんなって…あの人…新を認めてないのよ、あなた以上に…。」
「はあ?…なにそれ?」
「浩史の考え方や生き方をね、あの人は、認めた訳じゃないの…。
それは、わかっているわよね…。」
「まあね。…昔から、そうだし…根本の部分から、考え方が、違うから…。」
「…それでもね…あなたの父親として…ちゃんと、あなたの成長も、努力も、そして、あなたの持ってくる結果も、受け入れてるの。
それは、本当よ…。
だから、対等とまではいかないけれど、浩史を、一人前の大人として、今は、見ているわ…。
でも、新に対しては、全然、子供扱いなのよ…。
世間知らずの箱入りだって、思っているわ。
親が、思う以上に、子供は成長するのに…。
結果を出すことは、必要だけれど、そこへ至るまでの経過が、重要なんだと、あの人だって、教育者なんだから、わかっているはずなのに…。」
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