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雨は、本降りになってきたが、智世は、なんだか嬉しそうにしている。
「なんだよ、ヘラヘラと…そんなに、相合い傘が、嬉しいのか?」
「うん…嬉しい♪
だってね、カップルなら、憧れる雨の定番だよ♪
だってね、こんなこと、誰とも、したことないんだよ…。
それを、浩史と出来るんだよ♪
めちゃくちゃ、嬉しいに決まってるでしょ♪」
傘を持つ俺の腕に、自分の腕を絡ませる…というより、しがみつく?…様な感じだけど、智世は、もう嬉々として、雨を楽しんでいる。
「ぴちぴち♪ちゃぷちゃぷ♪らんらんらん♪」
雨降りの童謡まで歌い出しちまった…。
まあ、機嫌いいから、いいかなぁ…。
見覚えのある通りまで戻ってきた。
「…智、あそこのカフェなんか、どうだ?」
「わぁ、オシャレな感じ。あすこでいいよ。」
「よし、決まりな。」
少し足早に、二人、歩く。
カフェの中は、少し混んでいるが、上手い具合に、二人用の席が、空いていた。
「お腹空いたぁ…。」
「じゃあ、適当に、見繕ってやるよ。」
セルフカウンターだったので、注文をしにいく。
「…お待たせ。」
「うわっ、美味しそう♪」
「こっちがな、コールドビーフのバルサミコ酢掛け、で、こっちがな、海老とアボカド、で、最後、こいつが、照り焼きチキン」
「なんか、豪勢なサンドイッチだね。」
「さあ、食べようぜ。」
「うん。」
ぱくっ…
「うふっ…なぁに、これ!美味しい♪」
「本当だ。旨い!」
二人の顔が、自然と綻ぶ。
智世が、ぱくついていると、浩史が、指をさす。
「ほら、ほっぺ。…ソース着いてるよ。」
「えっ?どこ?どこ?」
「じっとしてろよ。」
ペロッ
「キャッ!…もう!浩史!…そ、そんなことしないのよ!…は、恥ずかしいじゃない!」
智世が、あたふたしているのを、浩史は、ふふんと、鼻で笑って見ている。
「…後で、おぼえてらっしゃい!」
「覚えてたらね…。ほら、続き…。」
「えっ?続き?」
「食べろよ…まだ、いっぱいあるだろ?」
「わかってるわよ!…これは、私の分だから、あげないからね。」
「はいはい…。」
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