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今は、静かな時間が流れていた…。
ほんの一瞬前まで、熱くたぎり、火照っていた体が、少しずつ穏やかに、落ち着いていく…。
隣で、まだちょっとだけ、息があがって、喘いでいる浩史を、そっと、包み込むように抱きしめる。
「私、本当に幸せだよ。ありがとう。浩史。」
「…君に…そう言ってもらえて…俺は…満足だよ…。
けど…悪ぃ…ちょっとだけ…休憩…。
…なんか、格好…つけすぎた…頑張り…過ぎた…。
…疲れた…。」
「うん…。ごめんね…。いっぱい、休んで…。」
智世の言葉を聞いているのか、いないのか…もう、浩史は、寝息を立てていた。
いつもとは、逆ね…。
腕の中の浩史が、智世は、愛おしかった。
片想いばかりしていた私は、あの時も、叶わぬ恋に未練がましく、ぶら下がっていた…。
そんな私を、黙って、見守ってくれていた浩史は、年下だなんて、感じさせなかった…。
あなたからのいきなりのキスは、衝撃的で、なにもかもを掻っ攫っていった。
たった一度のキスなのに…責任をとると、あなたは、言ったわ…。
一瞬、頭がついていかなかった…それでも…あなたが、私を、想う気持ちは、痛いほど、伝わってきた。
あなたに、私の渇いた心を癒せる力があるなら…そう思って、付き合うことにした…。
あれから、もう五年半…。
あなたなしなんて、今の私には、考えられない。
これから先も、ずっとよ、浩史…。
私は、あなたの隣のこの場所を、誰にも譲らないわ。この場所は、永遠に、私だけの場所なんだから…。
私は、浩史をギュッと抱きしめて、彼の心臓の音を聞きながら、眠りについた…。
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