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カタンカタン…カタンカタン…
列車の規則正しいレールの音は、気持ちがいい。
窓から、見える景色は、海辺の景色から、山の景色に変わっていく。
昨日の雨は、すっかり上がって、今の私の心のように、清々しい。
「…本当に、正直だな。」
「何が?」
「智のご機嫌度だよ。」
「ああ…そう言うことね。昨日は、ごめんね。
あのね、昨日のこと、私なりに、考えたんだ…。
ちょっとした、マリッジブルーだったのかな…なんて、思ったんだ。」
「はぁ?…マリッジブルーって、結婚前の女性が、なるもんだよ…君は、俺と結婚して、もう、半年だよ。なんで、今、マリッジブルーなの?」
「だって…他に、手頃な表現の仕方がないんだもの…なんだか、はしゃいでないと…不安で不安で…。」
そこまで言ったら、浩史が、肩に手を掛けて、私を引き寄せた。
ギュッと抱きしめて、耳元で、謝るの…。
「ごめん…気付かないで…カウンセラーなのに…。」
「浩史は、昨日、私が、おかしいのちゃんと気付いてくれたじゃない。
だから、謝らないで、ねっ。
あのね…結婚からこっち、もうすっごい勢いで、いろんなことがありすぎて、ブルーな気持ちなんて、持つ暇なかったんだよ、私。
だけど、こんなふうに、時間にも、気持ちにも、余裕ができたら、今まで、心の隅っこに追いやってた気持ちに、フッと、気付いちゃったの…。
不安とか、心細さとかに…。
甘えられるあなたが、側にいるから、弱い私を、受け止めてくれる、あなたがいるから…。」
「…泣き事、社会人になってからの方が、俺、お前に言ってるから、お互い様だ。」
「…エヘッ…そうだね。」
顔を見合わせて、お互いに、苦笑いする。
いつか、これも、笑い話になるんだろうな…きっと。
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