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部屋で待つこと数分。扉の奥から、二人分の足音が近づいて来た。
「ティア様。
カワード様が、お見えしました」
扉を開けたフィラは、そう言って一人の男を部屋に通す。髭をはやした、恰幅のいい男だった。
入ってきた男は、フィラを一瞥し、
「失礼する。
女王陛下、今後の王国の行く末について、話があります」
早速、用件を告げてきた。
ティアは、目の前の男を見ながら、
(この人から、ティアリーゼ様って呼ばれたことは無いな)
見当違いな事を考えていた。現実逃避である。
男の名は《カワード=ローリー》。実質的に、ソザード王国No.2の男である。
「分かりました。
フィラ、悪いけど席を外してくれる」
フィラは、はい、と頭を下げて部屋を後にする。カワードに向けて、気づかれないように舌を出しながら。
「お話とは、今朝届いたファルジニアからの親書についてですか?」
言って、ティアは机の上に封筒を置いた。
「ええ、その通りです。
前々から進言するように、我らは帝国と同盟すべきなのです」
フィラの予想は、やはり的中していた。それは、ティアがイヤと言うほど聞いてきた言葉だった。
ティアは溜め息をついて、
「何度も言うように、ソザードが中立の立場を崩すことは、絶対にありません」
強い口調で、カワードを見返しながら答えた。
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