【第1章】動き出す歯車

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 部屋で待つこと数分。扉の奥から、二人分の足音が近づいて来た。 「ティア様。  カワード様が、お見えしました」  扉を開けたフィラは、そう言って一人の男を部屋に通す。髭をはやした、恰幅のいい男だった。  入ってきた男は、フィラを一瞥し、 「失礼する。  女王陛下、今後の王国の行く末について、話があります」  早速、用件を告げてきた。  ティアは、目の前の男を見ながら、 (この人から、ティアリーゼ様って呼ばれたことは無いな)  見当違いな事を考えていた。現実逃避である。  男の名は《カワード=ローリー》。実質的に、ソザード王国No.2の男である。 「分かりました。  フィラ、悪いけど席を外してくれる」  フィラは、はい、と頭を下げて部屋を後にする。カワードに向けて、気づかれないように舌を出しながら。 「お話とは、今朝届いたファルジニアからの親書についてですか?」  言って、ティアは机の上に封筒を置いた。 「ええ、その通りです。  前々から進言するように、我らは帝国と同盟すべきなのです」  フィラの予想は、やはり的中していた。それは、ティアがイヤと言うほど聞いてきた言葉だった。  ティアは溜め息をついて、 「何度も言うように、ソザードが中立の立場を崩すことは、絶対にありません」  強い口調で、カワードを見返しながら答えた。
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