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突然だが、私はこの男が嫌いだ。
カワードは、母の側近だった魔導士だ。そのため、臣下の中でも強い影響力を持っていた。
中立の立場を望む母。帝国との同盟を望むカワード。二人は、直接的では無いにしろ、開戦直後から対立を続けた。
私が王位を継いでからも、この男は帝国との同盟を主張し続けた。依然よりも目立つ行動によって。
ただの臣下と女王という関係なら、押さえ込むこともできる。だが、私とこの男の間には通用しない。
第一に、私は成人の儀も終えていない子供だ。本来なら、この男が王位をついでもおかしくは無かった。
次にこの国では、魔導士としての称号が重要視されるということだ。
カワードは、各色の賢人を除く、最高位の称号である極魔導士だ。中級魔導士である私は、一人の魔導士としてこの男に頭が上がらないのだ。
だが、母の意思を継いだ以上泣き言は言っていられない。私は、カワードには女王の仮面を被る事にした。
「何故です! 帝国からは、共和国の土地の3分の1を譲渡する、という条件が出されたのですぞ!
そうなれば、我が国の食料、資源問題も同時に解決するのですぞ」
カワードは、机を叩いて反論した。
「確かにそうかもしれません
でも、共和国をそう簡単に制圧できるとは思えません それに、帝国が戦後こちらに攻めて来ないとも言えません」
ティアも、その迫力に負けないよう言い返す。
「例えどんな譲歩が出たとしても、ソザードは中立の立場を崩さしません!
これからも、両国が停戦するよう働きかけ続けます」
「これが、最後の通達になるのかも知れないのですぞ!
なのに、まだあの女の愚かな意思を継ぎ続け……」
その時、王宮内に19時の鐘の音が鳴り響いた。
その音と共に、扉が開かれ、
「お話中失礼します
ティアリーゼ様、執務の終了時刻になりましたので、お呼びに参りました」
二人の会話を遮るように、フィラが入室してきた。
「ありがとう、フィラ
話の続きは、また明日にでもしましょう」
言って、ティアはカワードに出ていくよう促し、
「それと、最後に言いかけた言葉は聞かなかったことにします」
感情の無い声で言い足した。
カワードはそれには答えずに、
「…失礼する」
乱暴に扉を開けて、部屋を後にした。
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