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カワードの足音が遠ざかり、ティアは安堵の溜め息を漏す。
フィラは、机上の整理をしながら心配そうに声をかける。
「大丈夫ですか?
何だか危ない雰囲気でしたが」
「うん、大丈夫
危うく仮面を外しそうになっただけ…」
ティアは、机に顔を埋めながら答えた。その声は、あまりにも弱々しいものだった。
フィラはあまり追及せずに、
「さて、片付け終わりましたし、魔導院に行きましょうか」
明るく声をかけて、ティアの腕を引いた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
そんな出来事を思い出しながら、ティアは魔導院へと目を向ける。彼女の顔は、何とも言えない表情をしていた。
あの後二人は、21時頃までいつものように魔法の訓練をした。そこでティアは、顔をしかめる羽目になる。
フィラは、1年程前に中級魔導士の称号を取得していた。ティアと同じ称号だ。
それから、フィラはどんどん魔法の技を上達させていった。白魔法以外の魔法は、ティアのそれを越え始める程に。
最近では、後輩であるフィラが、ティアに教えることが多くなっていた。
そんな、先輩魔導士として、情けない状況になりつつあるティアは、
「やっぱり、魔導院に通う時間をどうにかして増やさないとなぁ」
小さくぼやいて、机の書類の束を睨む。
女王の仕事量は、正直なところかなりの量がある。現に、目すら通していない書類が貯まっていた。
そんな中、無理を言って18時以降の時間をもらっているのだ。これ以上、わがままを言える状況では無かった。
フィラは、午前中と週の何日かを魔導院に通っている。二人の実力差が、広がるのは当然のことだった。
しかも、当の本人であるフィラは、今の状況嬉しがっている節がある。その為、余計に始末に終えないのだ。
ティアは、考えるのを止めて椅子から立ち上がる。そろそろ日付が変わる時間だ。
ティアは、ベッドに向かいながら手を振った。彼女の手に合わせて、部屋の明かりが消える。
瞬間、暗闇に包まれた部屋に、黒い影の様なものが侵入する。影はティアに飛びかかり、彼女をベッドに押し倒した。
突然の出来事に驚くティアは、首筋に感じた冷たさに身を凍らばせる。そこには、黒塗りのナイフが押し当てられていた。
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