【第1章】動き出す歯車

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「本来なら、私も成人の儀まで、中央魔導院に通っていたはずだったのだけど」  ティアは呟きながら、机の棚に目を向ける。棚には、亡き母親の写真が立てられいた。ティアは、それを懐かしむように見た。  ティアの母親、《リゼラード=イベスゲート》は、先代のソザード女王である。幼少時に、父親を病気で亡くしたティアにとって、唯一の肉親でもあった。  しかし、2年前に王宮内である事件が起きた。原因不明の、フォーンの魔力暴走である。  当事の大賢人でもあったリゼラードは、宮外への被害を防ぐため、これに一人で立ち向かった。結果として、その命と引換に首都の人々を守ったのだ。  リゼラードの死によって、次期王位はティアに継承されることになった。だが、当時のティアの年齢は、まだ16歳である。当然、臣下達からの反対の声は多かった。  その逆境の中でも、ティアを親身に支えてくれる臣下達もいた。そんな彼等に、ティアは自らの行動で応えていく。  ティアは、小さい頃から母の仕事を間近で見ながら育った。そんな彼女の働きぶりは、16歳の少女とは思えないものだった。  その働きぶりにより、ティアは多くの臣下に、自分を認めさせていったのだった。  そんなティアは現在、ある事について頭を抱えている。共和国と帝国間で起きている《フォーン戦争》だ。
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