第一章-バウンティハンターとアイアンクロー

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 先生は一生懸命賞金稼ぎを否定しておりますが、残念な事に貴方の目の前にいる生徒の過半数は賞金稼ぎなのです。  隣で賞金首について話し合うクラスメイトは言うまでも無く、その前の席で素知らぬ顔をした女子生徒もその隣で真面目に授業を聞いている優等生君も、あちらもこちらも丸っとまとめて、勿論この俺も賞金稼ぎだ。  賞金稼ぎという職業は考えなくても分かるだろうけど危険が付き纏う仕事で、怪我人は毎日当たり前のようにいくらでも出ている。毎月何人もの殉職者も出ているだろう。だが、その分稼ぎの良い仕事でもあった。被害者の憎悪と社会的知名度の分だけ吊り上る懸賞金を着飾った凶悪犯は、獣性剥き出しの人種には宝石のように魅力的だ。そういう連中が賞金稼ぎを生業とする野蛮な狩猟犬に姿を変える。  まあ、それでも命を危険に晒すには抵抗がある奴らが多いのだけどね。隣で盛り上がっているクラスメイトも、本心では507番を捕えようとは思っていないはずだ。507番は拳銃を所持しているそうだから当たり前で賢明な判断と言える。拳銃を持った犯罪者を相手に高校生が挑んでも、楽しい夏休みを前にして屍を晒すだけだ。  賞金稼ぎとは言っても高校生である俺達みたいな子供と、それを本業にする狩猟犬どもとは絶対的な壁があった。  というか、そんな勿体ぶった言い方をしなくても分かるだろうけど、簡単に言えば獲物が違うのだ。  俺達みたいな学生が狙う犯罪者は、警察ではなく個人営業の商店などが懸賞金をかけた万引き犯や不良ども、ちょっと大きなものでも轢き逃げの犯人を捜したりだ。言ってみれば、好きなときに好きなだけ出来るバイト感覚。  一方本業の連中は事務所を構えて複数人の賞金稼ぎで徒党を組み、有益なら情報料だけで数十万は貰える犯罪組織を追っていたりする。テレビドラマも顔負けな仕事だ。そういうところに魅かれて賞金稼ぎになった人も中にはいるかもな。
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