第四章-ハッピーエンドとエクスカリバー

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 小さなカマキリが、マカの回りを警護するように飛翔する。  その数は3。  小さいと言ってもそれはマカと比べたらの話で、子猫ほどはあるカマキリは、飛ぶのが下手くそなのか無風の工場で風に流されるようにふらふらと飛んでいた。  新手のカマキリ達の鎌は、通常のカマキリと比較すると非常に発達していて大きい。体長の半分は鎌と言っていいほど巨大だ。マカの鎌とは違い鋸の歯のような細かい刻み目のある刺々しい刃は、見てるだけで鳥肌が立つ。  カスミがミオを止めなかったら、今頃あの鎌はレザージャケットなど意図も容易く突き破り、皮膚を削って内臓に達していた事だろう。 「おっしーいん、てかあんたホンットに邪魔ん」  マカが2つの大鎌を振り上げると、呼応してカマキリ達も鎌を振り上げた。  着地と同時にカスミがミオを後ろに投げ捨て、止まらずに横に跳ぶ。一歩遅れて鎌が床を抉り、こちらも止まらずにまた振り上げられる。 「きゃははははは!」  鎌の鉄槌を無駄一つ無い精錬された動きで避けるカスミは、既にマカの攻撃を見切っていた。マカは両腕の鎌を振り下ろすか横に薙ぐか、もしくは大顎で噛み付くかの3パターンの攻撃しか行えない。冷静に判断すれば回避は可能だ。  マカが鎌を振り上げた隙に、俺は引き金を引き絞った。思ったより反動の少ない爆発のあと、銃弾が空気を焼きながら進みマカの腹部に命中。思った通り鎌ほどの硬度は無かった腹部を鉄が食らい付き、黄ばんだ半透明の体液を垂らした。 「いった! 乙女に向かって発砲するなんて非道ですぅ」 「いつかのお礼だ馬鹿」  多少の効果はあったがダメージは微弱過ぎる。  手を緩めず連射して見事全弾命中させるが、マカは防御する必要も無いのか無視しやがった。  その間にもカスミに対する怒涛の攻撃が続き、降りしきる鎌が床を耕していく。華麗に躱すカスミは余裕そうだが、如何せん攻め手を掴めないでいた。 「危ない!」  一撃必殺のギロチンが振り下ろされ、カスミは最小限の動きで横に跳んで避ける。その瞬間を狙って、天井付近を旋回していたカマキリが急降下。俺の警告で危険に気付いたカスミが体を捻るが、避け切れずに鎌が肩口に触れる。  カスミの肩に赤い鮮血が咲いた。  止まっている暇はなく、大鎌を避けるカスミにまたカマキリが迫る。
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