第一章-バウンティハンターとアイアンクロー

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 朝鮮半島で見つかったたった一つの資源は、自国や近隣国を戦禍に陥れるには充分過ぎる災厄だった。建前や理由は報復や救済と様々だったが、通じて正義を掲げた資源を巡る紛争は肥大化し、アジアの各国に飛び火した戦火は後に非核大戦と呼ばれるほどのものとなった。  あちこちで人が死んで、資源よりも大切なものが次々に失われていった。住処は焼かれ、生活は破壊され、土壌は汚染され、子供達も銃を持った。どれだけ技術が発展しようといつの時代も戦争の悲惨さと惨めさは変わり映えしない。  参戦したどの国もが大きな痛手を負い、十字架を背負い、絶望に陥ったところでやっと最後の銃声が途絶えたのだった。  被害の大きさの割に歴史の教科書1ページに収まってしまう情報の質素さというか無関心さは大戦の短さに由来するのかもしれない。戦争で人が大勢死ぬのは変わらないけど、死ぬまでの速さには拍車がかかってるって事か。非核大戦を核兵器が爆発しなかっただけマシと揶揄する人も多くいるが、爆発しなくても人は死ぬ。一発か何億発になるかの違いってだけ。  アジア全土で起こったと言える大戦だったが、日本は奇跡的にその戦火の被害が最も少なかった。まあ少なかっただけでもうやめてってくらいに死人は出たみたいだけど、大戦のドサクサに紛れて北方領土が返還されたりと良い事もあった。とされる。  だが、実際問題、今の日本が住み易いかと問われれば、俺は問い掛けてきた奴の頭を揺さぶって脳味噌があるのか確認したい衝動に駆られる。  戦争って奴は、起こってる最中は勿論、終わった後も大変なのだ。  最も問題視されたのは戦争の影響でアジアに溢れ返った戦争難民達だ。戦争や紛争の影響で事実上消滅した国家にいる難民達は、突然未来を奪われてしまった。  多くの近隣国は自国の復興に尽力を注いでいたため難民の受け入れを拒否するが、そこで名乗りを上げたのが世界一の慈善国家日本だ。戦争難民を安価で雇用出来る労働力として迎え入れる狙いがあったようだが、当時から反対意見が多かっただけにデメリットの多い政策だった。
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