第四章-ハッピーエンドとエクスカリバー

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狙いも何もない鎌が辺りを引っ掻き回して跳び、詰まれた段ボールを薙ぎ倒して機械が無い分広い倉庫に着地する。 「ほらほらほらああああああほおおおらああああ」  無茶苦茶に振るわれる鎌の衝撃波に乗って、鉄材や肉片が飛ぶ。  カスミとミオは一つ一つを身を翻して華麗に躱すが、そんな離れ業は逆立ちしても不可能な俺は機械の影に飛び込んでやり過ごす。  その間に何度見ても見慣れそうにない男の死体から2丁の拳銃を剥ぎ取り、嵐が止んだのを見計らって物陰から飛び出した。  既に殺陣を繰り広げるカスミとミオは、マカの鎌の中にいた。  イマイチ息を合わせようとしないミオが前に出て、カスミがそれをサポートするように立ち回って鎌を潜る。マカも4つの足で俊敏に動き回りながら、カマキリとの連携で倉庫にあるありとあらゆるものに切り傷を刻んでいく。  リボルバーを連射して邪魔なカマキリを撃ち落とそうと試みるが、天井付近を動き回る標的を狙い撃つのは素人には無理な芸当か。潔く諦めて無駄に大きな標的に切り替える。  狙いやすい腹部に弾丸を叩き込むと、感情的になりやすいマカの矛先はすぐにこちらを向いた。大鎌が振り抜かれ、読んでいた俺は斜めに切断された作業台を土台にして跳んでやり過ごす。  調子がいいのか、自分でも予想外な高さに跳んで着地。俺の誘導によって懐に入り込めたミオが、いつ用意したのかドライバーをマカの腹部に突き立てた。そして一気に振り抜かれる。 「ぎゃああああああああ!」  断末魔の悲鳴とともに、切断された腹部から黄ばんだ体液が大量に溢れ出す。  悶えるマカの懐に遅れて潜り込んだカスミが中肢を掴み、768番を締め上げたアイアンクローで骨の無い分硬い表皮をへし折る。力任せに引き千切られた中肢が投げ捨てられ、供花のように男の死体の上に飾られた。 「ああああああああああ!」  暴れるマカの中肢がミオの体を蹴飛ばし、大顎に狙われたカスミが後ろに跳んで跳んで跳んで躱し、追撃の鎌をしゃがんで避けた。  上空に待機していたカマキリが運悪く段ボールの山に吹っ飛ばされ、もがくミオを狙って急速降下。ぎりぎりで間に合った俺がミオの腕を引き立たせると、鋸の流星が段ボールに埋もれる。 「いっ!?」  だが、高速で飛び出してきたカマキリが、俺の左腕を抉っていった。  痛過ぎて視界が赤に染まる。
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