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あなたの肩口から覆い被さるようにして、僕はあなたの唇を求めた。
目を点にしたあなたは、僕の腕の中で身体を捩って逃げて、悲鳴に近い声を上げる。
「こっ…こんなトコで、ちょ、センセ、っ…………」
あなたの唇を捉えた僕は、有無を言わさず深く口づけた。
仲間達がすぐ傍で、目を見開いたまま硬直している。
それでも僕は、気にならなかった。
どうしても今ここで、陽向の前で、あなたにキスしたかった。
僕の思いを伝えたかった。
流される訳でなく、
逃げる訳でもなく、
かと言って逆らう訳でもなく、
あなたはいつもただまっすぐに、運命を肯定する。
その不器用だけれども揺るぎない強さで、
いつも僕を淀みから引っ張り出す。
そんなあなたを、僕は心から愛している。
そんなあなたを、包み込める僕でありたい。
これからの生涯をかけて。
陽向の前で今、誓うから。
「「「………………」」」
――ガコッ!!
「!!…っ痛い、です……」
こめかみに衝撃を受けて、僕は思わず腕をほどいた。
「セっセンセのバカっ!!」
耳朶まで真っ赤になって、頭から湯気の出そうなあなたが、拳を震わせている。
「……何もグーで殴らなくても……」
「もうっ!!……ここアメリカじゃないの!!
にっにに日本なの!!
アタシこう見えても、やっやま大和撫子なのっ!!」
「……どもってますよ?
意外に照れ屋さんなんですね、陽子は」
「センセはっ…てってて照れもTPOもなさ過ぎっ!!
もうっ!!信じらんない!!」
「夫婦の神聖な誓いのつもりだったのに。
いいじゃないですか、キスくらい」
「みっ未成年の教育上よよよ、よろしくないの!!
もう!もうっ!バカっ!!
大っ嫌い!!
アンタ達っ!!こんな大人になっちゃダメよっ!?」
「……ぶっ!…」
仲間達は吹き出して、笑い始めた。
「ははは……陽平がお前に惚れたの、わかる気がしてきた。ははは……」
「今は僕の妻ですから。
手を出さないで下さいよ?」
真剣に言った僕の、どこがそんなに可笑しいのか、仲間達は更に笑い転げている。
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