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彼への嫉妬が、途中で罪悪感に掻き消されるほど、
あなたはまるで初めてのような身体だった。
それでも僕は、初々しい反応に煽られ、止められなかった。
達したのも初めてだったのだろう。
息を弾ませ、放心状態で横たわるあなたを見て、
一方的にあなたを汚した自分を、今更ながら悔いた。
あなたの身体を拭いてパジャマを着せ、蒲団に横たえた。
まだ漂っているようにぼんやりしているあなたを、僕はまっすぐ見ることができなかった。
「無理させてすみません。……おやすみ」
立ち上がった僕のパジャマの裾を、あなたが握り締めていた。
あなたの傷ついた顔を見たくなくて、僕はその手を見ていた。
「こっちで一緒に寝て?」
耳を疑い顔を上げると、あなたが潤んだ瞳で、駄々っ子のように僕を見つめていた。
戸惑って、でも嬉しくて。
こんな情けない顔を見せたくなくて、『お腹を圧迫しないように』などと理由をつけて、背中からあなたに腕を回してそっと抱き締め、横になった。
「センセを抱き締めて眠りたかったのに、これじゃ顔も見れないじゃん」
尖らせた口が目に浮かぶような声で、あなたはまた、想像もしなかったことを言う。
……僕は、あなたを傷つけずに済んだのか?
「どうしたんです?今日は。妙に甘えっ子ですね」
「だってさ、せっかくの初夜なのに」
あっけらかんと言ったあなたの言葉に、僕は虚を突かれて、盛大にむせ込んだ。
ケラケラと笑うあなたの、細い肩が揺れる。
僕は愛おしさに我を忘れて、あなたを思い切り抱き締めていた。
「センセ、苦しい~」
「あ……すみません」
我に返って慌てて腕を緩める僕に、あなたは言った。
「センセこそヘンだよ、今日。子供みたい」
僕は泣きたかった。
あんな卑怯な抱き方をした僕なのに、あなたは……。
「……許してくれますか?」
「?何を?」
「……」
それ以上言葉にすれば、本当に泣いてしまいそうだった。
僕はもう一度、あなたの身体を撫でて、そっと包み込んだ。
僕はこれからもあなたの傍にいて、こうしてあなたに触れることを、許して貰えるのだろうか。
あなたの肩とお腹に触れている僕の手に、ふと、あなたの手が添えられた。
あなたから答えを貰ったような気がして、僕はあなたの手を握り返した。
あなたを抱き締めながら、
まるで僕はあなたに抱かれた子供のように安心して、初めて二人での眠りについた。
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