第1項 日常

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いつもどおり会社の定時を ほんの少し過ぎた頃 さっさと仕事を切り上げ会社を出る 課長がこちらを睨んでいるのはもうずいぶん前に気にならなくなっていた いつも通り帰り際にスーパーで焼き鳥と 缶ビールを2本かって社宅のアパートに向かう 社宅のボロアパートに着き すこし大きめの台風が来たらぶっ飛んでしまいそうな郵便受けをチェックすると珍しく手紙が届いていた A4サイズ程の茶封筒でしっかりと封がしてある その茶封筒に大きく私の名前が書いており 差出人はなく 名前の横に『取り扱い説明書在中』とハンコが押されていた。 「なんだこれ?」 少し怪しかったが、とりあえず一刻も早くビールで一杯やりたかったので茶封筒を持って散らかった自分の部屋に入ることにした 茶封筒を机の上に放り投げてスーツの上着をその辺に脱ぎ捨てると 早速缶ビールを勢いよく開けて 喉に流し込んだ、ちょっとむせた。 テレビを見ながら2本目の缶ビールの中身を半分程飲み干したとき ふと、机の上の茶封筒を思い出した 「取り扱い説明書在中ねぇ、、、どうせ男性化粧品かなんかのサンプルってとこでしょ」 そう呟きながら ビリビリとがさつに茶封筒の口をやぶく 中から出てきたのは数枚の紙をホッチキスでまとめてある物だった 表紙には大きく 『飯田輝夫取り扱い説明書』 と印刷してありその下には小さい文字と標識のようなマークがいくつか並んでいる その見た目はまさに家電製品やラジコンなどについてくる説明書そのものだった ただ1つ大きく違うのは飯田輝夫つまり私の取り扱い説明書であると言うことだ。
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