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とくにいつもと変わらぬ下校風景。私はロッカーから靴を取り出して床に放り投げた。 片方の靴がひっくりかえる。 『ちっ…』 こんなに些細なことでイライラしてしまうのにはワケがあった。 『長澤さん、靴は投げてはいけませんよ?』 …来た。 そいつはひっくりかえった靴を拾い私に差し出してきた。 そいつはニコニコ笑っている。 見た目はまんまゴリラだ。というか生物学的にゴリラだ。 一応名前はある。前田清志という名前が。 だけど名前で呼ぶやつは一人もいなかった。 "ゴリラ"そう呼ばれている。 『触るな、汚れる』 そう言って私は強引に靴を奪い取って汚れを取るように手で払った。 寂しげな表情を浮かべたゴリラを完全に無視して私は靴を履いて外に出た。
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