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その後も何度か試したが、不思議なことに俺が開ける分には問題ないらしく、「これで防犯対策はバッチリじゃな。」という近藤さんの言葉に納得しておいた。
部屋は思っていたよりも綺麗で日当たりも申し分ない。このアパートは外観こそボロイが、室内はそれ程でもないらしい。
…これであの家賃は安すぎる。もしかして何か理由があるのではないだろうか。騒音が煩いとか、水道の出が悪いとか。
「ま、問題があったところで他に行く場所もない。」
暖かくて綺麗で、おまけに一人暮らしなら十分な広さの家に激安家賃で住めるのだ。よっぽど生活に支障が無い限りは我慢するさ。
「じゃ、ワシはこれで。」
「ありがとうございました。」
玄関先で思いがけず世話になった近藤さんに茶でも飲んで行って欲しかったが、家具や食器が部屋にないのでは準備もできず、アパートの前まで誠意をもってお見送りさせていただいた。
小さくなっていく近藤さんの後姿を見送って時間を確認すると、そろそろ友人が荷物を届けてくれる時間だ。
「よし、片づけ頑張らなきゃ。」
気合を入れながら、アパートの階段下まで移動する。
階段の柵に背持たれて立ちながら空を見上げ、軽トラックに乗せられて来る俺の少ない荷物と友人を待った。
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