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別れ際に、妙に真剣な表情で言われた言葉を思い出す。
「そういえばお前さん、綺麗な顔しとるのう。」
「え?」
「…一人暮らしには、十分気をつけなさい。」
今までとは全く違う雰囲気に、「はい」としか言えなかった。
確かに高校生の一人暮らしなんて危なそうだけど…今のはもっと…
「何か明確なものが込められていたような…」
ブーッブー…
ジーンズのポケットの中で震える携帯を取り出して通話ボタンを押すと、電話の相手は予想通り、約束の時間になっても現れない友人だった。
「もしもし、永野?」
残念なことに、用件を聞かずとも容易に想像できてしまう。
『あ、祐希!あのさー、ここドコ?』
「俺が知るワケないでしょうよ。」
『だよなー。ゴメン、また道に迷っちゃったみたいだ。』
実にあっけらかんと言う永野。
むしろこの状況を楽しんでいるような声だ。
「いいよ、こうなることは薄々気づいていたから。」
『マジで!?さっすが祐希、よく分かってるー。』
「俺的には予想を裏切ってほしかったよ…」
幸い彼はアパート近くのコンビニに停車しているらしく、そのまま下手に動かないように指示し、携帯を切ってコンビニへ駈け出した。
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