【開かない扉】

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 一人暮らしに必要最低限な物しかないため、あっという間に運び終わった。 あらかた片付けも済んだ所で、親父さんが立ち上がった。 「んじゃー、俺は帰るわ。祐希、何か困った事があったらすぐに連絡するんだぞ!」 「はい、ありがとうございます。」 下まで見送ろうと俺も腰を上げると、ぐしゃぐしゃと髪を掻き回された。 あぁ、こんなやり取りを次にできるのはいつなんだろう… 親父さんや永野と簡単に会えなくなる寂しさが隠しきれない。 「そんな顔をするな。確かに以前よりは顔を合わせる回数が減るかも知れんが、会えない訳じゃない。」 「はい…」 「そうだよ、祐希。いつでも会いに来る。だからそう落ち込むなよ。」 「ん、そうだな。ありがとう、親父さん、永野。」 溢れ出しそうな気持ちをグッと堪えて笑顔を見せる。そうすれば親父さんと永野も笑顔になった。
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